浜崎あゆみ「Love songs」感想

 

 

 前回に引き続き、今回も聞いて間もないうちの感想を書いていきましょう。きっと長くなると思われますが、この感想を読んで少しでも浜崎さんの楽曲に興味を持っていただければ、と思って書いていきますので、お暇な方はぜひぜひ読んでやってください。

 

○全体的にどうなの?

 今回のアルバムは、ほとんど小室哲也さんの楽曲で埋まっちゃってます。これには賛否両論あるだろうなーとか思ってたんですが、そういうことはまずアルバム全曲を聴いてから言え、ということで、まだ聴いてない人は文句言っちゃ駄目だと思いますね(笑)。そりゃ確かに私もいつものメンバーのぴしっとまとまった楽曲も好きですが、これくらいぶっ飛んだ挑戦をするあゆさんが好きなので、私はアルバムを聴く前から期待しまくってました。ただアルバムを通して聴いてみて、やはり普段の浜崎あゆみの色はちょっと薄れている部分があるので、もし浜崎あゆみというブランドのイメージを壊されるのが怖い、と思っている人は、不思議な顔で少し離れた場所から見てればいいと思いますよ。それに、あの名盤「(miss)understood」で既に言っているじゃないですか、「変化を恐れるのなら離れたとこで見ててよ(「alterna」より)」ってね。

 

○イメージ面について

 ジャケット写真、めっちゃ可愛いんだけど(笑)。ええもう感想はそれだけですよ、とてもじゃないけど30代には見えませんとも。あとは、そうですねぇ、アルバムタイトルがタイトルだけに、ピンクとかやわらかい色合いが多いですね。あったかい感じ。

 

○各楽曲について云々

 前置きはこれくらいにしておいて、各楽曲についての感想をつらつらと述べていきましょうかね。

 

01. Love song

 今回はインストなしのスタート。日本テレビ系「スッキリ!!」12月テーマソングらしいです。一回だけ聞きました。私はメロディを聴く前に歌詞を見ちゃったんですが、それを見た瞬間、神が降臨したのかと思いましたよ(笑)。とにかく歌詞が真正面からグサグサと心に突き刺さってくるんです。特に私の心をえぐり取るかと思われたのが、「失ったものはありますか? それは置いてきたものですか? 後悔をしていますか? 取りに戻る事が出来たらと?」と、「何故涙はとまらない?」でした。これを見て、楽曲も聞いて、やはり彼女は人を導く人なんだと確信しましたね。最近は自身の迷いとか絶望とか決意なんかを歌うことが多かったけど、この曲はそれにプラスして「他人を導く力」を持っている。しかもそれは優しく語りかける助言ではなく、強く、時に刺々しく心を突き刺す叱咤にも似た言葉なんですよね。彼女はまず答えは示さずに、各々が自身と向き合うべききっかけを与えてくれます。そうして得た答えは曲を聴いたそれぞれの中に眠るものであって、決して同じものではないと分かっているんだろうから、「こうした方がいいんじゃない?」とかは言わないんじゃないかと思ってます。傷ついてボロボロなのは私たちだけじゃないから心が伝わってきて、同じ悩みを経験し、同じ苦痛を味わったからこそ感じられる何かがある。その何かってのはいろいろと想像することができるけど、それがきっと愛なんじゃないかと私は考えているわけであって。
 そんなふうに聴く人たちに語りかける面もあるけど、この曲にはもう一つ、浜崎さん本人の意志が強く滲み出ているところもあります。それが幾度も繰り返される「ゆずれない想いがなけりゃつまんない意味ない」というフレーズ。もう十年以上も人々の前で歌い続け、多くの人に支持され、その反面でたくさんの人から傷つけられている彼女。喜びと悲しみと、希望と絶望とをくぐり抜けてきて、そうして見出せた答えがこの曲なんじゃないかと私には感じられました。愛と夢と歌。それが彼女の人生であることは確かなんだろうなぁと思いました。昔は「もうどうなってもいい」という思いで歌を歌い始め、周囲の人を誰も信じてなかったと言っていた少女が、人生をかけて歌(音楽)と向き合い、たくさんのものと戦い続けている。そう考えるとこの曲は本当に意味深で心にじわじわと沁み込んでくる。いろいろとつらいこともあったけど、やっぱりこういう曲を聴くと、浜崎あゆみのファンでいてよかったと、浜崎あゆみの曲を誤解せずに聴くことができてよかったと思えますね。

 

02. crossroad

 お次はシングルの曲より。QUALITA by H.I.S. CMイメージソングらしいですが、そのCMを見たことがないっていう。この曲が小室さん作曲で初めて公開された曲でしたね。タイトル通り、人生の岐路に立っているような歌詞が印象的です。歌い方のせいでもあると思うんですが、これはいつ聴いても切なくなります。あの時にああしていればとか、あの選択をしていればどうなっていたんだろうとか、懐かしい場所をふっと通りかかったような、そんな感覚がぐっと襲ってきます。時が流れて変わってしまったものもあるし、意図的に変えてきたものも、どう頑張っても変えられるものじゃない、又は変えることができなかったものなど、そういった後悔とはまた違った「振り返り」がこの曲には詰まっているような、そんな気がします。後悔とか反省とかでもないし、懐かしんでいるって感じでもない、本当にふと過去を振り返ってみたら、思いのほかたくさんのものがこっちを見ていた、って感じでしょうか。そういったものに今の思いを語りかけているような。だからpvでもずっとあんな表情をしていたんじゃないかなーとか思ったりしてます。

 

03. MOON

 そしてみんな大好きMOONですよ。いや、私が好きなだけですが(笑)。この曲は、とにかく切ない! 切なすぎる! どうにも必要以上にこの曲から感情を感じ取ってしまったというか、いつ聴いてもこの曲には引き込まれて戻って来られなくなってしまいます。この曲は小室さん作曲ではなくて、かの有名な「A Song for XX」の作曲者でもある星野さんが作曲者です。それも理由の一つなんだろうけど、とにかく歌詞がね……切なすぎて耐えられないっていうか。何だろう、限りない優しさはあるけど、どこか周囲の冷たさが感じられるというか、深淵にいる人が深淵にいるもう一人を助けようと語りかけているっていうか、そんなイメージがあります。真っ暗なところで二人きり取り残されているような、そこに最後の最後で光が差し込んでくるような。タイトルやpvのイメージもあり、暗くて切なくて、でも優しい愛に溢れた曲だと思ってます。

 

04. sending mail

 インストかと思ってたら普通に歌があったよ! って曲です。サビだけ聞いたら「おお、小室さんだ小室さんだー」とか思ってたんですが、ラストにかけてのあのたたみ掛けてくるような攻撃(笑)が、とにかく恐ろしくて仕方がない。「やめて、私が悪かった、だからやめてー!」と言いたくなります。そのくらいアレンジが素晴らしい曲でした。歌詞に関しては、こういうことって確かにあるよなぁ、と思いましたね。言いたいことがあってもなかなか言えない、でも顔を合わせないメールでもなかなか送信することができない……そこまでの勇気が出てきそうで出てこない。そうやって悩んでいたらいつの間にか時だけが過ぎていた、って感じの。そういう経験は私にもあります。本音をぶつけるのが怖くて遠回しな言い方をして、だからいつになっても距離が縮まることはなくて。本当はそんなに多くの望みはないのに、それさえ壊されることが怖くて仕方がないから何もできない、という恋愛っぽい曲ですね。でも見方によれば恋愛じゃない曲のようにも聞こえます。特に友人関係でこういう悩みを持っている人って多いんじゃないでしょうか。

 

05. Last angel

 最後の天使というタイトルのこの曲は、シングル「L」に収録されていた曲でした。一度聴いただけでは歌詞の意味がつかめずに、何回か聴きなおしてようやく見えてきたような気がするこの曲。なんというか、どこか「Free & Easy」っぽいとこがあるんじゃないかと思ってます。誰かを支えているような面もあるけど、この曲はどっちかというと自身の意志が強く押し出されている感じ。不安なところはあるけど見ていて欲しい人がいるから進んでいくことができる、って感じでしょうか。しかしLastって単語と言い、「終わり告げるこの鐘の音」と言い、本人は前向きに捉えているっぽいけど気になるものは気になる。その答えは見えてきたようでまだ靄に包まれててよく分かってなかったりします。

 

06. insomnia

 不眠と名付けられたインスト曲。なんかもう最初から怖いんだけど。不安を煽るような変な音が徐々に迫ってくる感覚は身震いがする。ちなみにこの曲を含めたインスト曲は全て小室さん作曲ではなくて、いつものメンバーのCMJKさんと中野さんが作曲してます。小室さん曲の間に挟まれたインストですが、小室さんの曲の「らしさ」を壊さずに、自然な繋ぎができていて好印象でした。怖いことに変わりはないけどね!(笑 それにしたってこの曲、最後の音って何かが通り過ぎた音のようにしか聞こえないんだけど……

 

07. Like a doll

 楽曲名が公開された時から最も気になっていたのがこの曲。タイトルの意味は「私は人形が好きです」ではなくて、「お人形さんみたいに可愛らしいわ!」でもなくて、「まるで木偶人形じゃないか!」って感じだと思います(おい)。あの名盤「GUILTY」に収録されていた「Marionette」と似たタイトルですが、ずしんと重くのしかかってくる感じではなく、曲自体はわりとさくさくっと歌っちゃう感じで軽めなんですよね。歌詞に関しては、何もかもの感情を閉ざしていれば悲しむこともない、でもそれだとまるで死人のようだというものですが、「それが望みなのなら」というフレーズがあるせいで、他人事のように歌っているわけじゃないんじゃないかと思いました。一人のアーティスト、一つの商品として人前に出る時は笑顔を見せ、本当の感情を隠しながら生きるしかなかったってとこはあると思うし(過去に「楽しいわけでもないのに」って歌ってたこともあるし)、そういう意味でも自分に向けた曲でもあり、またそういった痛みを知っているからこそ偽りなく願いを伝えられる、という面もあるんだろうなぁと感じました。だからこんなに生々しく表現できて、ふわっと包み込むような表現じゃないんだろうなーとか思ってます。最初のフレーズとその後の雰囲気のギャップがいい味を出してると思いますね。最初は優しく聴いてくれるのかと思いきや、後でがすがすっと言っちゃうんですもんね。でもそれくらいしないと届かないものもあるわけで。そういうところ、つくづくあゆさんって上手だなーとか思います。

 

08. Aria

 インスト曲。最近は、というか「GUILTY」以降どのアルバムもインストのレベルがどんどん上がっている気がします。特にオーケストラ調になっているものが増えてきてますね。これもその一種です。わたくし弦楽器は好きなのでそういうのは大歓迎です。この曲、綺麗で爽やかで明るい曲だなーとか思いながら聴いてたんですが、最後らへんなんかめっちゃ怪しいんですけど! こーいうことするからあゆさんの作曲陣、特に中野さんは侮れない。笑

 

09. blossom

 そしてみんな大好きblossomですよ。いや私が好きなだけですが(笑)。この曲もMOONと同じく星野さんが作曲。そして切ない。切なすぎる。メロディは明るいし、歌詞も前向きで明るいんだけど、その明るさが暗闇から抜け出した後の光明のような明るさだから切ないんですよね。あと前奏ってもしかしてMOONと繋がりがある? のかもしれないと思ったり。「大人になっていく事の意味なんて知らなくたっていい」って言葉にはうんと救われました。この歌い方のせいでもあるだろうけど、あまりの優しさに涙目になることもしばしば。こういう曲ってやっぱ一度や二度じゃなく幾度も苦痛を味わって、それでも這い上がっていこうとする意志がなければ歌えない歌だろうなぁと思ったりしました。あゆさんもよく言ってたけど、痛みを知っているから優しくも強くもなれるってことなんだろうな、と。どうでもいいけどブロッサムっていう響きが綺麗で好きです。

 

10. Thank U

 タイトルを見て「MY ALL」系だろうなーと想像していたんですが、そんな感じでもありそれ以上でもあったこの曲。どのへんがそれ以上だったのかというと、とにかく曲が美しい。いつもは明るい曲はひたすら明るく、綺麗な曲は美しさを追求している感じがしていたんですが、この曲は明るさと美しさを併せ持っているような感じがしてかなり好印象でした。言葉の数こそ少ないけど、久々に聴くあゆさんのハイトーンボイスのおかげでもうお腹いっぱいって感じです(笑)。この曲に関しては、あんまりとやかく語る必要はないと思いますね。ただ全身で感じ取るだけでいいんだと思います。

 

11. Sweet Season

 マッキーこと槇原敬之さん作曲のミリオンセラーマガジン『sweet』TVCMソング。実はわたくし槇原さんの曲は結構好きで、何気にCDも持ってたりします。小室さん曲みたいに高音と低音の差が激しいわけではないけど、とてもゆったりしていて穏やかで、聴いていて心が落ち着くまさに槇原さんっぽい曲だと思いましたね。だから四季の歌詞もぴたりと当てはまっているし、自然と笑みが零れそうな希望が見える曲だけど、それを浜崎さんが歌っちゃうからどこか切なさが出てきてるんですよねー。ただ平穏なだけじゃない、笑顔だけがあるわけじゃなく、たくさんの苦痛を乗り越えたから得られた幸せなんだと教えられているような曲ですね。なんか今回こういう曲が多い気がする。それもいわゆる「心境の変化」ってやつなんでしょうか。

 

12. overture

 今回のアルバムで最後のインスト曲。この曲こそまさにオーケストラ風ですね。明るい曲からしっとりしたバラードに繋ぐインストなので、切なさだとか美しさだとかを絶妙に表現した素敵なインスト曲です。でもこれに続くのが「do it again」だから序曲というタイトルになったんじゃないかなーとか考えたりしてます。

 

13. do it again

 さっきバラードに繋ぐとか言ってましたが、この曲はどう考えてもバラードじゃない! 「だーんすだーんすだーんすどぅうぃなげん♪」という歌声から始まるこの曲ですが、はっきり言いましてね、このアルバムの中で最も好きな曲になった気がしますね。雰囲気としては、やはり切ない。強いところもあるけど、やっぱり切なさがどうしても出てきてしまっているというか。歌詞を見れば分かると思うんですが、そこには大人になってたくさんのことを知り、経験し、嫌でも悟り続けてきた人の姿がくっきりと見えてきます。この曲もまた他の曲と同じように誰かに語りかける部分もあるけど、決して明確な答えを示してくれているわけではないんですよね。むしろ今まで背を向けていた事に目を向けさせ、「それって実際どうだった? そしてそれをどうしたいの?」と問いかけているような気がします。実はこの曲も言葉の数はそれほど多くはなくて、語りかけている部分はサビ以外のところだけなんですよね。じゃあサビでは何を言っているのかというと、人を導く者としての意見というか、そこに立ったからこそ感じられた「信念」や「うまくいかないこと」なのではないかと思います。そして何気に出てきた「悲しいのは諦める事」という歌詞。これを読んで「Pride」を思い出したのは私だけではないはず。私は「Pride」が好きすぎて今まで聴きまくってたんですが、この歌詞を見てちょっといろいろと考えてしまいましたね。それを語り出すと長くなるのでここでは何も言いませんが、「大人になって知る事ね」という歌詞のとおり、あゆさんも大人になったんだなーとか思ったりしました。
 これだけでも充分に謎めいてて力強くて切なくて希望と絶望とが入り混じってる雰囲気を感じ取ることができるけど、このアルバムで最大の謎がこの曲に含まれていると思ってます。その謎とはつまり、「夢だけじゃ、、、夢だけが、、、」という歌詞。これを最初聴いた時、「え?」と思いました。「その後に続く言葉は何? 何を言いたかったの?」とちょっと混乱してしまいましたとも。「夢だけじゃ、、、」という歌詞の後に続く予想としては、「夢だけじゃどうにもならない」とか「夢だけじゃ生きるには足りない」とかでしょうか。「夢だけが、、、」に続くのは、「夢だけがまだ生きている」とか「夢だけが独り歩きしている」とか。どっちにしろプラスなイメージはないですね(笑)。そんでもって「夢だけじゃ」が先に来て「夢だけが」が後に来ている点も何かしらの意図があるとすれば、これまた謎は深まっていく、とね。でもこの謎はpvを見ていたらなんとなく分かったような気がしました。いや、そう勝手に思ってるだけであって、実際にどういう意味が込められているのか知っているのは本人だけだから何とも言えないんですけどね。
 あと言い忘れてたけど、この曲のアレンジがかなり好みでした。特に最後に向かっていくあたり。爽やかな感じから一変、重々しささえ感じられるアレンジがこの曲のテーマをよく表していると思いました。それからタイトルと「dance」と「sing」については、これまた諸説あるかと思われますが、別に会社やファンが「もう一度」を強要しているわけではないと思うんですけどね。あくまで本人の意志が出てきてるんじゃないかなーと思ってます。

 

14. November

 思えばこのアルバム、バラードが少ないんですよね。いやネクレベも少なかったですが、シングルがバラードっぽいのが多かったからちょっと意外だったなーと思ったんです。MOONはどっちかというとロックなバラードだと思うし、crossroadはミディアムなバラードで、純粋なバラードはこのNovemberと次のVirgin Roadだけだと思ったわけです。そしてこの十一月というタイトルの曲ですが、最初に聞いた時は「なんか地味な曲だなー」とか思ってたんですが、何回か聴いているとものすごく好きになってしまいました。まず最初に、珍しい音を使ってるなーと思いました。そんでもってメロディが綺麗ですね。そしてアレンジもいい感じっていう三連星に加え、歌詞がいい味出してるっていうおまけつき。いや歌詞はむしろメインだと思いますが。ええもうこの歌詞、かなり私の好みですとも。そしてこの歌詞に出てくる人たちがどんな立場に置かれているのかと考えてみると、なんとなく「動けない立場」ってのが見えてきた気がしました。そもそもあゆさんってEndless sorrowの頃から「翼は一つしかない」という意識が確立していて、それはSecretの歌詞や十周年のロゴにも出ていたから、自由に行きたい場所へ行くことはできないという事が一つの現実として語られているとこがあるんですよね。この曲の歌詞はそれに加え、Momentsのような「踏み込んではならない、姿を現してはならない、でも救いたい人がいる」という意思も隠れてるんじゃないかなーと思ったりしてます。これはDaysも同じなんですが、どこか「自分はどうなってもいいから」という自己犠牲的な面もあるんですよね。そう考えるとかなり切なくなる。けどそこがいいっていう(笑)。しかし、この曲はdo it againに次ぐ謎かけが一つだけあります。それは何なのかというと、ずばり、タイトル。「なんで十一月? 何が霜月なのさー!?」って感じで、もうさっぱり分かりませんとも!(笑

 

15. Virgin Road

 本編ラストを飾るのは、シングル「L」に収録されていた結婚ソング。しかし結婚の曲なのに実際は母親への感謝の曲という、あらゆる意味で常識から外れているこの曲。そんなあゆさんが好きで好きで仕方がない私ですが(結婚の幸せを歌うより、命を授けてくれ、ここまで育ててくれたことへの感謝を示すのは当然と言えば当然だけど、世の中にはその感謝さえ忘れて浮かれまくる人が大勢いるので、なんかこれが常識から外れている気がしたんですよ)、この曲を初めて聴いた時は素直にすごい曲だと思いました。浜崎あゆみよ、よくぞやってくれたなと。さすが50枚目のシングルに恥じない出来だ、と。そんな上から目線の感想はどうでもいいとして、この曲はメロディも歌詞もアレンジもかなりいい感じだったと思いましたね。最初は「こんなに高音になってて大丈夫か?」と思ったんですが、アルバム曲に紛れてしまえば怖くない! ということで、高音なんて何のそのでした。むしろアルバム曲の方が容赦ないっていう。歌詞に関しては、先にも言ったように母親への感謝の気持ちが溢れており、またそれだけでなく母親との命の繋がりを意識したような美しさが感じられます。とここまで普通に語ってしまいましたが、ファンじゃない人は知らないと思うので説明しておくと、浜崎さんはいわゆる母子家庭だったんですね。どうやら父親との思い出はないらしくって、その母親との仲も初期のA Song for XXの頃では「最悪」と言っていいほどでした。昔は分かり合うこともなかった母親に対し、この曲では「ありがとう」という思いが溢れ返っている。それは今まで許せなかったことが許せるようになった証であり、穏やかな心持ちで過去を振り返っている面も見られます。10代って親に反発することが多い時期だと思うので、そういう人たちが20代や30代になってこの曲を聴くと共感できるんじゃないかなぁとか思いました。ただ「貴女がいつかのその昔」ってとこは母子家庭限定ですけどね。そうなんです、この曲には親の姿はあっても父親の姿はない。父親はあくまで過去の中の存在であり、その人のことを彼女は「あの人」と歌っている。そしてその人と自分が愛している人は似ているような気がすると言っているのは、おそらく血の繋がりだとか命の繋がり、または同じ環境で生きてきた事実、同じ生命である証などを歌っているのではないかと。そう考えると私はforgivenessを思い出してしまうわけです。そこで浜崎さんはこう言っていたんです、「僕たちはほんの点でしかなく 全てでもあって」と。これが何を表しているかは……私は説明しませんよ(笑)。

 

[bonus track]
16. SEVEN DAYS WAR (Live at Yoyogi on Oct.11.2010)

 そして噂のボーナストラックですよ。この曲に関しては、あまり多くは語らずにいようと思います。ただ一つだけ言えることは、いいカバーをしたなぁということだけ。ていうか歌声が涙声なのでそれだけでもう私は涙目になってしまいますね! あ、ちなみにこれは初回限定なので、通常版はシングル「crossroad」に収録されていたものになります。ご注意を。

 

○そしてどうなる?

 アルバムタイトルは「Love songs」つまり「愛の歌(複数形)」ですよ。そこに収録されているのは様々な形の愛の歌。それは決して恋愛だけにとどまらず、むしろ愛=生を表しているんじゃないかと思ってたら、ずばり某インタビューでそう仰られていたという。私は現在執筆中の小説のせいで「愛とは何か」を考えていたので、このアルバムは一つの資料となるかなーと期待していたところがありました。しかし実際に聴いてみて、これは資料ではなく答えだと思いました。まあ正直言ってはっきりした答えを示されている曲なんて一つもないわけですが、そこから愛について考え、愛とはそもそも生きることなのではないかと気付いた時、このアルバムのタイトルの意味も、ここに収録されているいろんな色の楽曲の意味も、全てが自分の中に入ってきたように感じられましたね。そういった解釈というのは一つだけにとどまらず、それこそ聴く人の数だけ存在すると思うのですが、結局その終着点というのは「Life」に繋がるのではないかと。だって私たちは、生きている生命ですからね。そうやって考えつつもう一度一曲目の「Love song」を聴いてみると、「愛のない人生なんてそんなの生きる自信ない」という歌詞の意味もまた違って聞こえてくるんじゃないでしょうか。

 

 

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