閉鎖

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4.協同 - 02

 

 きゅっ、と靴の音が鳴る。続いて聞こえたのはボールが床を叩いた音だ。
「さすが黒田、いい感じだ」
 俺の斜め前にいる先生が独りごちる声が聞こえた。それを後ろから眺めながら、俺は一人で淋しく卓球のラケットを握り締めている。
 球技大会の種目が決まった後の体育の授業では、各自がそれぞれの種目の練習をすることになっていた。俺は亮介が勝手に決めた卓球の練習をしなければならないわけだが、不真面目で自信過剰な亮介君が授業に出ることはなく、仕方がないので他に卓球に出る人と一緒に練習をすることになったのだ。
 ただ球技大会のルール上、二人一組として試合に出るわけであり、俺はシングルなプレイの練習をしてもあまり意味がないことになる。ついでに練習試合はほとんど審判をやらされていた。とりあえず俺も練習したいと主張してみたものの、他の連中は「加賀見と一緒なら優勝確実だからやるだけ無駄」と口を揃えて言ってくるのだ。それっていじめじゃねえのかよ。
 そんなわけで俺は壁に向かってピンポン玉を投げつけ、返ってきたそいつをラケットでぶん殴るという地味な作業に勤しんでいた。それにも疲れて休憩していると隣でバスケの試合が始まっていた。どうやら晃の代わりである陰はバスケに出場するらしい。
 お手並み拝見とばかりに俺は陰のプレーを眺めていたが、彼の運動神経の良さは晃が自慢するだけあるものだった。大人しそうな見た目とは裏腹に、相手のボールをすぐに奪うわ、鉄壁ガードはすんなり破るわ、極めつけには得点源の六割以上というエースっぷり。たぶん俺とは住む世界が違う人間なんだろうな。いや、人間じゃなくてクローンだとかいう話なんだっけ。
 これであいつが卓球に出場するって展開だったら面白かったのになぁ。亮介の奴も真面目に練習したかもしれないし。何にせよ、俺は一人で淋しく練習するのが嫌なんだ。なんで二人一組なのに一人での練習をしなきゃならんのだ。こーいうのって相棒との息の合わせ方ってヤツが大事なんじゃねえのかよ。
「はあ……」
 ため息ばかりが出てくる。もともと体育は嫌いな授業じゃなかったはずなのに、なんだか今はさっさと授業が終わって欲しかった。
「水瀬、俺らそろそろ終わりにするけどお前どうする?」
「あ、そーなの。じゃ俺も終わりにするわ」
 卓球仲間は額に汗を流しいい具合に青春していたようだ。俺はなんだかやる気が起きなくて彼らの輪に入ろうとは思わなかった。
 皆はせっせと卓球の台を片付け始める。俺はラケットとピンポン玉を手元に集め、それらを一つずつ袋の中に詰め込んでいく。
 台を運ぶ卓球仲間の後ろに続いて体育倉庫に向かい、ラケットとピンポン玉が入った袋を決められた場所に置いておいた。これで今日の体育の授業は終わりってことだ。やれやれ。
「そんじゃ、お疲れ」
 仲間は俺を残し散らばっていく。まっすぐ更衣室に向かう奴もいれば、体育館に戻って友人を待つ奴もいた。俺はとりあえず一度大きく伸びをし、更衣室に帰る前にトイレへと向かった。
 ふらりふらりと廊下を歩いていると静寂が心地良く感じられる。壁を一つ隔てた場所ではまだ幾つかの試合が行われているだろうに、こちらには何の喧噪もない単なる平和な空間が存在するんだ。そう考えると建物ってのは不思議なもんだなと感じられた。普段はそんなことを考えるタイプじゃないのに、まさか俺はストレスでも溜まってるんだろうか。その原因は考えるまでもなく奴なんだろうけどさ。
 きゅっ、と靴が床を踏み締める音が鳴る。そしてそれに続いて聞こえたのは誰かの話し声。
 俺はなんとなく足を止めて耳を澄ませた。
「や――」
 声がくぐもっていてそれはよく聞こえなかった。だけどなんだか聞き覚えのある声だったような気がして、声が聞こえた方へと身体を向けた。
 視界に映ったのは中途半端に閉じられた扉で、少しだけ開いているおかげで声がここまで漏れているようだった。
 厄介事に自ら飛び込む必要はなかっただろう。見て見ぬふりをしていると何事も上手くいっただろう。だけど聞こえた小さな声が俺の耳に届いてしまったから、真相を確かめるまでは安心できないと思ったんだ。俺は気がつけばその扉を堂々と開いていた。
 そうやって見えた部屋の様子は暗くてよく分からなかった。
「わっ」
 俺がぼんやりとつっ立っていると、部屋の中にいた数人が慌てた様子で部屋の外へと逃げていった。ちょっと顔を外に向けてみると、全員がちゃんと制服を着ており、どうやら彼らは俺のクラスの連中ではないらしい。それを見ると俺は意味もなくほっとした。
「弘くん?」
「へ――」
 聞こえてきた声は明瞭で、それは俺の名を呼んでいた。ついでに聞き覚えがあったというのは間違いじゃなかったことが証明された声でもあった。
「ええと、キアラン?」
「本当に弘くんなんだ……」
 部屋の中に視線を戻すと、床の上にぺたんと座り込んでいるキアランの姿がある。相手は何やら信じられないと言わんばかりの顔で俺を見上げていた。とりあえず彼の元へと歩み寄り、窓に掛けられていたカーテンを開いてみる。
 眩しい光が二人を鮮明に描き上げた。
「どうしたんだよ、こんな場所で。今は授業中だろ?」
「ボクらのクラスは先生が休みだから授業がなかったんだ。弘くんこそ授業中でしょ」
「俺はもう終わった。今から帰るとこ」
 くるんと曲がった金髪に隠され、相手の目は見えなくなった。そればかりか彼は座り込んだままで立ち上がろうとする気配さえない。
 何やら嫌な予感がしてきたが、まずはそれを無視して相手に聞いてみることにしよう。
「さっき何人か部屋にいたようだけど……何やってたんだ?」
 はっきりと確認できたのは二人までだったけど、おそらく三人以上はいたのだろう。そのうちの一人が俺にぶつかったようだったが、相手の顔までは確認できなかったので素性は分からない。
 ただ俺が部屋に入った途端に逃げ出したということは、見られてはまずいことをしていたんじゃないだろうか。その行為とここにいるキアランとを結びつけると、まさかキアランを脅して薬を奪い取ろうとしていたとか? いやいや逆にキアランに別の場所から入手した薬を売りつけていたのかも。とにかくやばいことをしていたに違いない!
「弘くん」
 ふと気付けば相手は俺を見上げていた。彼の綺麗な碧眼が光に照らされて煌めいている。
「助けてくれてありがと。ボク、ゴーカンされそうになってたんだ」
「まあまあ、謙虚になるなよ。これくらい礼には及ばな――」
 あれ? なんだか今、俺の予想と全く違う答えが提示された気がしたぞ。
「え、あの、何されそうになってたって?」
「ゴーカン」
 その単語は聞いたことがある。確か、男の人が女の人を無理矢理犯すっていうアレじゃなかったか? ということは何だ、さっき逃げて行った奴らはキアランを犯そうとしてたってことか?
 亮介じゃあるまいし、なんでそんなおかしい事件が起きそうになってたんだよ! やっぱここはホモの巣窟なんじゃねえかよ、俺は間違った場所に転校してしまったんだ!
「お、お前なあ……男のくせに情けないぞ。相手ぶん殴ってでも逃げろっての」
「それは分かってるんだけど、薬飲まされちゃって……今もろくに動けないっていうか」
 ああ、だから立ち上がろうとしてないのか。納得。いかんせん俺も薬を飲まされた経験があるからそのつらさはよく分かるのだ。
「そーいうわけだから弘くん、ボクを部屋まで連れて行ってくれないかなぁ」
 下方から猫なで声が聞こえてきた。視線を落とすと、目をきらきらと輝かせている少年の姿がある。
「あのー……俺、着替えなきゃならないんだけど」
「じゃ着替え終わるまで待ってるから!」
「この後にも授業があるんだけど!」
「休んじゃえばいいじゃん」
 こいつ、この機会を逃すまいとしてやがるな。ここで捕まったらきっと今日の授業全てを台無しにしてくれるんだろう。せっかく助けてやったのになんてことを考えてるんだ。
「だってだって! 助けてもらったお礼がしたいんだもん!」
「お礼なら後で受け取ってやるから、動けるようになったら一人で帰れって」
「ハクジョーモノー!」
 頬をぷくっと膨らませ、やたらと可愛らしく怒られてしまった。相手は年上であるはずなのにとてもそうは見えない。だからさっきの連中に狙われてたんだろうか。
「ちゃんと後で部屋に来てよ! 絶対に、約束だからね!」
「はいはい」
 俺は彼に背を向けて歩き出す。動けなくなって縮こまっている彼を一人だけ取り残し、それでも何の躊躇いもなく外の世界へと戻っていった。

 

 +++++

 

 思えば俺はキアランの部屋を訪問することは初めての経験だった。とりあえず亮介に部屋の位置は教えられていたけど、特に用事もなかったのでそこに入ったことはない。
 しかし亮介からの警告だけはよく覚えていて、だから俺は一度亮介に事情を説明してからキアランの部屋に行こうと考えていた。そうやって今日の授業が終わった後に部屋に帰ったはいいものの、こんな日に限って亮介は部屋にいなかった。
 どうしたもんかと考えつつ結局はキアランの部屋の前まで来てしまっている自分がいた。別にお礼を受け取るだけなんだから平気だよな。相手が何かしてきそうだったら速攻で逃げればいいだけのことだし。
 大きく息を吸い込んで吐き出し、俺は意を決めてそっと部屋の扉にノックをする。
「開いてるよ」
 中から小さくも明るい声が聞こえてきた。ドアノブをくるりと回し、ゆっくりと扉を開いてまずは中の様子を確認する。
「――へ?」
 そこにいたのはキアラン一人だけではなく、狭い空間の一部を見覚えのある後ろ姿が陣取っていた。この部屋の主は片手にティーカップを持ち、既にリラックスして座り込んでいる客と向き合っている。
「よう、弘毅。お前キアランにお呼ばれしたんだって?」
「亮介……」
 場違いのように思える客とは間違いなく加賀見亮介だった。自分の部屋にいる時と同じような態度の大きさを見せつけ、すっかりくつろいでこっちに視線を投げかけてくる。
「お前、俺にはキアランの部屋には一人で行くなとか言ってたくせに、ここで何してるんだよ!」
「午後のティータイムに決まってんだろ」
 片手に小奇麗なティーカップを持ち、亮介は優雅な手つきでそれを口に運んだ。何なんだこいつは。俺に一体どんな警告をしやがったんだ!
「えー亮ちゃん弘くんにそんなこと言ったの? ひっどーい、弘くんだっていつでも遊びに来てくれていいんだよ? あ、そこ空いてるから座って」
「う、うん」
 ぱたりと後ろ手に扉を閉め、俺は亮介の隣にある座布団の上に腰を下ろした。すぐさまキアランが紅茶の入ったカップを俺の前に置いてくる。
「カモミールティーだけど、飲める?」
「ああ」
 正直紅茶はあまり好きじゃなかったが、せっかく出してくれたんだから頂いておくことにしよう。一口飲んでみるとなかなかさっぱりした味わいだった。
「今日のお礼にクッキー焼いたんだ。食べてくれないかな」
 何やら控え目な様子でキアランは机の上に置いてあるクッキーを俺に差し出してきた。しかしそれは既に半分以上が消えているようにしか見えず、ちらりと隣に座っている亮介の顔を一瞥する。
「ごめんね、亮ちゃんが先に食べちゃってこれだけしか残ってないんだ」
「ああ、やっぱり……」
 なぜ亮介がここにいるのかということが分かったような気がした。亮介に対する感情はあらゆる方面へ出ようとしていたが、とりあえずそれを抑えてクッキーを食べてみることにする。
「ん? 美味しいじゃん」
「本当? やった!」
 ぱっと笑顔になったキアランは胸の前でぎゅっと手を握り締めた。
 口の中に広がる味はとても心地のいいものだった。その辺の店に売ってても違和感がないレベルで、洋菓子好きの俺としてはいくらでも食べられそうなクッキーだ。彼にこんな特技があったなんて知らなかったな。
「弘くん、今日は本当にありがとうね。弘くんが来てくれなきゃ、ボクきっとあいつらに襲われてたよ」
 穏やかな光が差し込む中、キアランはとても真面目そうな顔で俺に話しかけてきた。
「なんだよキアラン、お前また襲われかけてたのかよ。成長してねぇな」
「もー、亮ちゃんは黙ってて!」
 横でむしゃむしゃとクッキーを食べながら亮介が口を挟んできた。しかしよく食う奴だな。
「またって言ってたけど、前にもああいうことされてたのか?」
「う、うん……ボク、ハーフだから珍しがられてて、よく嫌がらせされるんだ」
 しゅんと小さくなったキアランは俯き、髪に目が隠れてしまった。その姿はいささか子供のようで、だけど実際は俺よりも年上でしかない。
「……あれ、キアランってハーフだったのか? てっきり生粋の外人かと思ってた」
 ブロンドの髪も青い瞳も日本じゃなかなかお目にかかれないものであり、日本人っぽさが少しもない相手がハーフだとはなかなか信じ難い。いや、ハーフってのはそういうものかもしれないけどさ。
「ボクは父親がイギリス人で、母親が日本人なんだ。イギリスで両親が離婚して、母親に連れられて日本に来たのは小学生になる前だったから、ボクはほとんど日本人みたいなものなんだけどね」
「その見た目で日本人とかねえわ」
 ばりばりと硬い物を壊す音に混じって亮介の声が届く。つーかこいつどんだけ食う気だよ。俺の為にクッキーを焼いてくれたとか言ってたのに、それを全部台無しにするつもりか?
 俺は紅茶をもう一口頂く。
「この学校って全寮制でしょ? そういう閉鎖的な場所だったら珍しがられるのは最初だけだって親は考えてたのかもしれないけど、現状はそうじゃなかった。ボクはもうやだな、早く卒業してしまいたい」
 なんだかどきりとした。俺も亮介のファン達に睨まれているとはいえ、この場所を本気で嫌ってるわけじゃない。だけどキアランはここから出られる時を待ち焦がれるほどこの場所が嫌なんだ。それ程の嫌がらせを受けてるってことなのか――。
 俺は彼のことを誤解していたかもしれない。亮介から聞いた断片的な情報だけを頼りに、偏見の色眼鏡で彼を見ていたのかもしれない。
「キアランは、将来の夢とかあるのか?」
 卒業するということは未来に近付くということだ。それは同時に、薬の売人からの解放でもあるってことか。彼はなぜ売人などという役を演じているのだろうと思ったけど、俺にはそれを聞く権利がない。
「ボクはね、パティシエになりたい! その為に今から修行してるんだ、クッキーだけじゃなくていろいろ作れるよ!」
「こいつ、菓子作りだけは上手だからな」
 嫌味か毒舌しか言わない亮介までもがキアランの腕を認めているらしい。そもそも亮介は美味しいものが食べられるのなら相手が誰だろうと関係ないんだろうな。だから今日もさっさとここに来たんだろう。
「キアランなら立派なパティシエになれると思うよ」
「えへへ、ありがと。また何か作ったら食べに来てね! 弘くんだったら大歓迎だから!」
「そうは言っても、俺が一人でここに来るのを亮介は許してくれないっぽいし」
「ええっ、なんでなんでー!」
 すっかり騒がしくなったキアランは亮介に向かって高い声を上げる。それを横目に亮介はティーカップの中にあるものを全て喉の奥に流し込んでしまった。普通の食事は小食なのに、菓子となるとよく食う奴だな。
「優しい俺は忠告をしておいてやったんだ。キアランは根っからのホモなんだから、部屋に連れ込まれたらヤバいことされるぞって言っただけさ」
「変な嘘つかないでよ、ボクはそーいうことはしないってば!」
「本当にそう言い切れるのかぁ?」
 ふふんと嫌味ったらしい笑みを浮かべ、亮介は相手の顔を覗き込んだ。どこの悪役だお前は。
「だってお前は弘毅のことが好きなんだろ? 身も心も奪い取りたいって考えてんだろ?」
「そりゃ確かにボクはホモだし、弘くんのことが好きだけど、別に恋人になりたいって思ってるわけじゃないもの」
 気が付けば何やらよく分からない話になっていた。相手の言っていることがいまいち理解できない。
「それってつまり、俺と友達になりたいってことだよな?」
「うん」
「でもそれじゃホモって言わないんじゃ」
 男と友達になりたいだけでホモだなんて呼ばれてたら、世の中ホモだらけになっちまう。当然俺もそう呼ばれることになり、それを避ける為には生涯一人で孤独に生きるしかないってことか。なんてつまらない人生なんだそれは。
「ええと、あのね。ボクは男の人しか好きになれないんだ。だけど好きになった人と恋愛したいわけじゃないの」
 相手の口から落ち着きを孕んだ言葉が漏れ出てくる。俺はそれを静かに聞いた。亮介もまた興味深げに耳を傾けているようだ。
 改めて俺と相手とは別々の人間なんだと思い知らされる。
「だって恋人になったらセックスしなきゃならないでしょ? ボク、セックスしたくないもの」
 何が彼をそう思わせているのか。何が彼にとっての基準なのか。だけど俺はそれを否定したくはなかった。
「おかしな奴だな。たとえ恋人になったとしても、男同士ならセックスしないで一生暮らすことも可能だろうが」
「そうだね。でもボクが今まで好きになった人は、みんなボクにそういうことを求めてきたから」
 俺はふと体育の授業中に見た彼の姿を思い出していた。なぜ彼が数人の青年たちから逃げ出せなかったのか、どうして彼らを追い払っただけでこんなにも感謝をしてくれるのか、その理由がようやく分かったような気がした。
「まあとりあえず、俺はキアランにそーいうことは求めないから安心してろ」
「うん、ボク弘くんのことは信じてる」
 そもそも俺はホモじゃないんだ、彼にそういうことを要求するということは、俺がホモであることを主張することとイコールになるってことだ。それだけは絶対に有り得ないから自信を持って断言できる。
「ふん、未来のことなんざ誰にも分かんねえよ。お前らバカじゃねえの」
 ただ一人俺の隣にいる奴だけが不機嫌そうな顔をしていた。机の上に置かれていたクッキーはもはや跡形もなくなっており、紅茶の一滴も残さず腹の中に押し込んだ亮介は決して微笑もうとはしない。
「人間なんか、未来が存在するか否かすら知ることもできないんだから――」
 まるで揺らめく炎を見つめているような瞳をまつ毛の下に隠し、亮介が一人きりで漏らした言葉は空気に乗せられて俺の元に届けられ、それはしばらく時を流した後にも残る鮮やかな棘として俺の心に突き刺さっていた。……

 

 

 

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