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14

 風のない空間があった。それは室内では当たり前の光景で、この洞窟でも同様だと思っていた。
 しかしガーダンの集団に囲まれている今、確かに俺は風を肌で感じている。どこから吹いているのかはさすがに分からないが、その証拠に俺やルクの髪が小さくなびいていた。ただ一人だけ、リヴァの髪は全くなびいていないことが気になる。
 俺の前にいる外人は数本の短剣を両手に持っていた。それを一度だけ手中で綺麗に並べ、素早い動きで敵の中へ投げ込む。
 飛ばされた短剣は光を纏いガーダンの兜を貫いた。頭をやられたらおしまいなのか、兜に穴が開いたガーダンはあっけなく倒れてしまう。それでも数はなかなか減らず、すぐに他のガーダンが剣を振りかざしてきた。
「うわっ」
 あのコピー集団が意思を持っているとは思えないが、連中の中には俺を狙ってくる奴もいるらしい。太陽なんかないのに白い剣がぎらりと光り、その軌跡を予想して俺はかろうじて避けることに成功した。
「何やってんだよ樹、その剣は飾りじゃないんだろ!」
「そ、そんなこと言ったって」
 短剣を器用に扱いながらもリヴァは振り返らず怒鳴ってきた。そうこうしているうちに再びガーダンは剣をこっちに向けてくる。ぎりぎりでそれを避けていると、ちょっと離れたところで外人がガーダンを蹴り飛ばしていた。
 分かってるんだ。この場にいる以上、俺も戦わなければならないのだろう。
 思い切って腰に吊るしていた剣を鞘から抜いてみた。荷物として持っていた時とは違い、ずしりとした重量感が威圧してくる。しかし俺が持っている剣は一本のみであり、もう一つはまだグレンの手元にある。
「リヴァ、短剣一本貸してくれないか」
「扱いには気を付けてよね。それ、よく切れるから」
 心配してくれているような言葉を発しながら、外人は刃が剥き出しになっている短剣をこっちに投げてきた。なんとか無事にキャッチできたが、こいつは俺の身を案じる気などないのではなかろうか。
 とにかくこれで俺の戦闘スタイルは完成したということだ。二つの刃物を握り締め、ガーダンのボスを倒した時のことを思い出す。
 前から突き出てきた剣先が見えた。それをリヴァから借りた短剣で受け止め、相手の動きが停止した隙に長剣で鎧の中心を突き刺す。硬いと思い込んでいた鎧は刃が触れるとあっさりと穴が開いた。空洞の腹が見え、長剣を抜くと相手は地面に倒れる。
 これなら俺でもどうにかできるかもしれない。ぐっと両手に力を込め、次の獲物に刃を食い込ませた。驚くほど簡単に青い鎧が床に転がっていく。
「よし、いいぞ――」
「馬鹿、よそ見するな!」
 聞こえた怒声にはっとする。背後から剣の光が迫っていた。それはまっすぐこちらに向かっている。
 あまりに近すぎて俺の手では間に合わないだろう。それでも反射的に短剣を握っている方の手が顔の前に移動し、俺はぎゅっと目を閉じた。
 闇の中でひんやりとした空気を感じる。
「大丈夫だった?」
 いつまでたっても痛みは訪れず、びくびくしつつも目を開けてみた。そうして目に入ったのは凍っているガーダンの姿であり。
「油断しちゃ駄目だよ、お兄ちゃん」
 守っていたはずのルクが俺に注意をしてくる。彼の小さな手はうっすらと光を帯びており、周囲には冷気が漂っていた。まさかとは思うが、彼がガーダンを凍らせたのだろうか。
「ルク、この氷はお前が――」
「お喋りしてる暇はないよ!」
 ルクが前方に手をかざすと彼の前にいたガーダンが凍った。しかし不思議な現象はそれだけでなく、奥の方では大きな炎が生成されていた。あの周辺にはグレンとクミがいたはず。こんなに小さな男の子ですらこんなことができるのなら、あのクミという女の子にも同じような力があってもおかしくないということか。
 今度はガーダンが吹っ飛んできた。また外人の蹴りを食らったのかと思ったが、リヴァはただ立っているだけだった。片手に短剣を持ち、もう片方の手を前方に突き出している。そこから突風が吹き出しているように見え、鎧集団はそれに吹き飛ばされているようだった。
 いいや、よく見ると飛ばされているだけじゃない。青い鎧に刃物で切られたような傷が付き、次々と動かなくなっている。さながら風の刃といったところだろうか。追い討ちをかけるように外人は短剣を投げつけていた。
 ルクといいリヴァといい、異世界の人間はえらく恐ろしい力を持っているんだろうか。その中に混じっている一般人の俺はどうすればいいのか。
 俺が必死に自己防衛している間にガーダンの数が急速に減っていき、数分も経たないうちに地面が青い鎧で埋め尽くされてしまった。そうさせたのはほとんどリヴァだけであり、立っている鎧がなくなると連中に突き刺さっていた短剣を一本ずつ回収していた。
「おーい樹、無事だったかぁ?」
 煙を放出しながら燃えたままのグレンが声をかけてきた。その隣には金髪の女の子の姿もある。どうやらグレンもガーダンたちに襲われていたらしく、俺が使うはずだった剣を握り締めていた。
「なんだ、お前もちゃんと戦ってたんだな。よいことだ、うむ」
 俺の手元を見ながら相手は満足げに頷いてくる。
「戦っただなんて、俺はただ自分の身を守ってただけだよ。ガーダンを倒したのはほとんどあいつだし」
「あいつって――お前の保護者のあいつか?」
「誰が保護者だって?」
 すかさず横から声が飛んでくる。外人は短剣を回収し終えたらしく、数十本はあるであろうそれをまとめて懐にしまい込んでいた。そんなにたくさんどこに隠し持ってたんだよ。
「クミ! こんなところにいたんだ」
「ルク……もうっ! 捜したんだからね!」
 子供たち二人はガーダンの隙間を駆け抜け、無邪気に顔を綻ばせながら手を取り合っていた。予想した通りあの二人は知り合いだったようだ。しかし兄妹にしては髪の色が違い過ぎるし、二人はどういう関係なんだろうか。
「おお、お子ちゃまたちも無事に目的を果たせたようだな。ガーダンの連中も倒せたし、これで万事解決ってわけか」
「どこが解決してるんだよ、この炎人間」
 けらけらと笑うグレンを目が座っているリヴァが小突く。この二人って対照的な性格してるよなぁ。
「あのさぁ、二人とも。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
 落ち着いたこの時に疑問は解消しておくべきだと思った。だから俺は躊躇わず自分の無知をさらけ出すことができたのかもしれない。
「その、グレンが燃えてるのとか、ルクがガーダンを凍らせたのって、俗に言う魔法ってやつなのか?」
 俺としてはもうそうとしか考えられなかった。そうでなきゃ説明できないことが多くある。その質問に答えてくれたのはグレンだったが、彼の口調はどこか外人を思わせるところがあるような気がした。
「魔法じゃない、呪文だ。魔法と呪文は違う。ちなみに俺が使えるのは呪文だけ。なんて言ってもほとんどの奴らがそうなんだけどな」
「なんだよそれ、わけ分かんねえ。魔法と呪文なんて同じじゃねえのかよ?」
「だから違うんだって。いやそれよりも樹、お前って本当に何も知らないんだなぁ。逆にすごいぞお前!」
「え、そ、そう?」
 なんだかよく分からないが褒められた。いや、こいつのこの瞳は珍妙なものを発見した時のそれだ。仕方ないだろ、俺は異世界からの客人なんだから。
「えーと。つまり魔法と呪文は違うってことか」
 別に魔法でも呪文でもどっちでもいいような気がしたが、それを言うとさらにややこしくなって分からなくなりそうなのでやめた。とにかく魔法と呪文は違うということは分かった。何がどう違うかなんて知らないが、詳しく説明しないところを見るとそれほど重要じゃないってことだろうか。
「お前は知らないと思うがな、俺だけじゃなくクミも呪文が使えるんだぞ。何を隠そうこの俺を燃やしている炎を作り出したのは他でもないクミだからな!」
「……なんであんたが威張ってんだよ」
 ぼそりとした外人の冷めた突っ込みが飛ぶ。しかしそれはグレンには聞こえていなかったようで、燃えながら彼は底なしの笑顔を見せていた。何がそんなに嬉しいんだか。
「それはそうと、樹。お前はこれからどうするんだ?」
 唐突にグレンは真面目そうな顔に切り替わる。しかし、今更どうするもこうするもないだろうに、相手は俺に何を言って欲しいというのだろう。
「ガーダンの連中を見つけてぶっ潰すに決まってるだろ」
「あ、いや、そういう意味じゃなくてだなぁ」
 グレンは俺と目を合わせてきた。燃えているせいでその瞳の色が分からない。
「ほら、ガーダンを倒すって言ってもさ、実際お前って何もできないじゃんよ。剣だってまだちゃんと扱えないんだろ? その様子じゃ呪文も使えなさそうだし。そんなんで一体どうやってガーダンを倒す気なんだよ?」
「えっ、そりゃあ」
 痛いところを突かれてしまった。根本的な部分にある俺の駄目な面をぴたりと言い当てられた気分だ。だけど俺は嘘を吐いてでもやり遂げなければならない。
「気合いでなんとか」
「なるかよっ!」
「やっぱ無理?」
「当たり前だろ!」
 グレンには全面的に否定されてしまった。そもそも俺は、ガーダンを倒す方法なんてこれっぽっちも考えていなかった。今までなんだかんだでどうにかなってきたんだから、流れに身を任せていればいいとだけ思っていたのだろうか。
「いつだって問題となるものはだな、目の前にあるもんなんだぜ。そしてその問題を解決できなければ次には進めないのさ」
「いきなり何を言って――」
「まあ聞けよ、樹」
「……」
 やっぱりこいつは卑怯だと思う。俺の言葉を聞いてくれない。だけど俺の価値を認めてくれるから、俺は彼を本気で嫌いになることができない。
「実はな、俺はな、呪文の中でも水属性のものが得意なんだ」
「ふうん」
 呪文にはどうやら属性があるらしい。なんだかどこぞのゲームを思い出しそうな設定だな。
「じゃあお前さ、その呪文でも使って自分の火を消せばいいじゃん」
「あのなあ樹、この状況でこの俺がそうしなかったとでも思うのか?」
「は?」
 グレンは一つため息を吐いた。常識的なことを言ったと思ったんだけど、とんでもなく呆れられてる気がするぞ。助けを求めるように黙って腕を組んでいる外人に視線を送る。
「要するに呪文が使えなかったってことだろ? あんた頭悪そうだし、詠唱に失敗でもしたんじゃないの?」
「そんなわけねえだろ! 俺はちゃんと一字一句間違わず唱えたぞ!」
 あろうことかリヴァはグレンを挑発していた。本人に自覚はなくともそうとしか思えなかった。こいつらを二人きりにしたら喧嘩しかしなくなりそうだな。それもリヴァが一方的にグレンを足蹴にする場面しか想像できない。
「俺が思うに、この地には何らかの封印が施されているんだろう。俺が試みた水属性の呪文以外はちゃんと発動しているからな、封じられているのは水属性だけだと思うんだ」
「……推測ばかりしてないで、この地が怪しいと思うなら、地元の人間に聞いてみた方がいいんじゃない?」
「えっ」
 グレンに鋭い言葉を突き刺した外人はちらりと二人の子供を見た。彼らは何やら話し込んでいるらしく、こっちの話題は聞いていないみたいだった。俺が動く前に炎に包まれた奴がゆっくりと彼らに近付いていく。
「ようクミ、それとルクとかいう坊主。お前らに聞きたいことがあるんだ」
「何でしょうか、グレンさん」
 丁寧な返事をしたのはクミだった。ルクと違って礼儀正しい子なんだな。
「実は俺たち三人は今の状況をさっぱり理解していないらしいんだ。だから地元民であるクミたちにこの世界のことを教えてもらいたいんだけど……」
「いいですよ」
 クミは明るい笑顔ではきはきと答えてくれる。今のグレンは相当変な奴のようにしか見えないのに、俺が知らない間に二人には信頼が生まれていたらしかった。それがちょっぴり淋しかったりする。
 金髪の少女はゆっくりと歩いて青年三人の前に立った。隣にはルクが並び、二人は一度だけ顔を見合わせる。
「えっと、じゃあ説明しますね。ここはオーアリアという名前の世界です。そしてこの冬島はオーアリアの世界の一番端にあって、船も飛行船もなくて完全に孤立している、人の少ない場所なんです」
 どうやら異世界には一つ一つ名前がついているらしい。しかし世界の隅にあって人が少ないだなんて、俺たちはよっぽど変な場所に飛ばされてきたんだな。
「それで、この世界は今ガーダンがたくさんいて皆が困ってるんです。それに最近はまだ落ち着いてるけど、過去には……あ、ご、ごめんなさい」
 クミは説明の途中でいきなり恥ずかしそうに顔を赤くして頭を下げた。俺にはクミがなぜそんなことをしたのか理解できなかったが、それを聞こうと口を開くよりも先にグレンが口を挟んできたので、結局分からないまま話が進んでしまうこととなった。
「そりゃ確かにここはオーアリアだろうけど、つい数分前に俺と樹はオーアリアにいた。そこは都市の一つ、イラツミハークだった。俺はこれでもフリーターだから世界の状況には詳しいつもりだ」
 珍しくグレンが真面目そうなことを言っていた。いつもはお調子者みたいな奴だけど、こんなふうに真面目になるとどこか雰囲気が重くなる気がする。それが彼という人間の一面なんだろうな。
「グレンさん、何が言いたいのですか?」
 そしてクミは恐ろしく正直なことを平気で言っていた。少女が吐き出した文字の羅列はいささか酷い言葉のように聞こえなくもない。
「だから! 俺が言いたいのは、こっちではガーダンはついさっき世界に進出したはずなのに、なんでクミはそんなことを知ってるのかって言いたいんだよ! だろ? 樹!」
「そういえば……」
 グレンに言われるまで全然気付かなかったけど、確かにそうだ。どこか俺たちの知識と矛盾しているところがある。
「これはどういうことなんだ?」
 グレンは詰め寄るようにクミに迫った。クミは一歩後ろに下がった。なんだかゲームのイベントシーンでも見ている気分になる。緊張した空気がこの場を支配していた。
「あの、グレンさん」
 まるで消えてしまいそうなほど小さい声がクミの小さな口から漏れてきた。グレンはそれを聞き、歩みを止める。
「えっと、私にはあなたの言っていることの方がよく分からないのですけど……」
「は? どういう意味だよ」
 グレンの間抜けそうな声が周囲に響いたが、少なくとも顔は真剣そうだった。しかし燃えながら言われると妙な威圧感がありそうだな。
「ガーダンはグレンさんが思っているほど知られてないものじゃないんです。ずいぶん昔からこの冬島にもよく出てくるし、他の大陸にもたくさんいるんです。今は知らない人の方が珍しいと思いますけど」
「え」
 まるで俺の知識と異なるものを見せられ、頭の中がぐるぐるし始めてしまった。
 なんだよそれ。グレンの言ってたことと全く一致していないじゃないか。確かグレンはほとんど知られてないとか言ってなかったっけ? いいやそれよりも、ガーダン連中が世界に逃げたということは俺のせいかと思ってたけど、クミの話が本当なら違う気がするんですけど。そこのところ、どうなってるんだ。
「何? 樹、君そんなふうに考えてたの?」
 横から外人が口を挟んできた。ちょっと目を大きくし、意外な事実を見つけたかのような表情をしている。それがなんだか腹が立ってしまう。
「うっさいな、俺は何も知らなかったんだよ! つーかお前は知ってたのかよ?」
「ガーダンのこと? まあね」
 どこぞのフリーターよりも居候の方が世界の事情には詳しいようだ。
「じゃあなんでグレンはそんな勘違いをしたんだろう?」
「俺は勘違いなんかしてねえっての!」
 俺の呟きにもすかさずグレンは突っ込んできた。何も悩みがなさそうな奴だけど、やはりこればかりは気にしているらしい。
「君は他に何か知らない?」
 外人はそれまで黙っていたルクに話しかけていた。少年は顔を上げ、首を横に振ってから付け加えるように言う。
「もし知ってても言っちゃいけないことが多いから。多分何も教えられないままだと思うよ」
「それって国か何かの?」
「星って言ったら分かる?」
 さっぱり分からないことをルクは言っていた。夜空のお星様がなぜこの流れで出てくるというのか。
「あぁ、君たちってあそこ出身なんだ」
 しかしリヴァは分かっているようで、一人で話を進めて一人で納得して話を終わらせてしまった。この野郎、俺が話についていけないことを知っていながらこんなことをしてるんじゃないだろうか。
「ま、まあガーダンのことはいいとしてだな。クミたちはエフって奴を知ってるか?」
 唐突に話題を変え、グレンの口からぽんと不思議な言葉が飛び出してくる。
「俺をここに飛ばした子供がさ、去り際に言ってきたんだよ。エフって奴に会えって」
 そうだ、そうだった。藍色の髪の少年は確か、俺にもエフという名前を投げかけていたじゃないか。
「エフならこの洞窟の中で住んでいますよ。お部屋の位置は私が覚えてるので、ご案内できますが」
「よーし、じゃあまずはそいつに会ってみようぜ! それでいいな、樹!」
「俺は構わないけどさ、リヴァはどうする?」
 何かにつけて文句を言ってくる外人には一応訊ねておいた。
「ちょっと待って」
 いきなり彼は俺の目の前に手を広げてくる。相手は目を閉じて少し俯き、何やら考え事でもしているようにも見えた。また何か理不尽なことを言われるんだろうか。事が起こる前に俺はさっと身構えてしまっていた。
「樹、君は知らないだろうけどこの世界は君の言う『あーるぴーじー』とよく似た世界なんだよ」
 おもむろに外人が口を開いたかと思うと、彼の唇から紡がれた台詞は予想の斜め上を行くものだった。しかし俺にとっては何を今更という感じで、どう反応していいか困ってしまう。ここでは普通に呪文だの剣だの鎧野郎だのがあるんだし、何よりそのシナリオ通りに事が運んでいるあたりからして、非常識な世界であることに否定要素など一つもないのだ。だからもういちいち驚いている暇はない。
「何が言いたいんだよ?」
「君なら一度くらい考えたりしたんじゃない?」
 もったいぶった言い方をしてくる奴だった。どうでもいいから早く言えよ。
「ダンジョンとか洞窟とかで必ず出てくるのは?」
「そりゃ敵だろ」
 当たり前のことをなぜ真剣になって考えねばならないのか。
「まだ分からない? ガーダンも、他の危なっかしい連中も、この辺りを大量にうろうろしてるんだよ? 味方に守られているとはいえ、君なんかがそこをふらつくことできる?」
「え、え、え」
 そうなの? ガーダンってそんなにいっぱいいるもんなの? 確かにあの黒い壁の場所ではいっぱいいたけど、あれはあそこだけだと思っていた。じゃあ何だ、やはりここは俗に言うダンジョンというやつで、だから俺が出歩くには戦う覚悟が必要だってことなのかよ? なんてこった!

 

 

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